作品カタログFineArtWorkCatalog宮嶋政穂
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Nirvana(吹き消す)は僕のコンセプト
僕の絵のコンセプトは、画布の上の絵の具の存在と、存在する絵具の消去だ。僕はそれをする人間であるということ。
絵を描く当たり前のことだけれども、僕はそれを見つけるのに58年かかった。
サンスクリット語のNirvana「吹き消す」とは、僕の絵を描く方法「コンプレッサーで絵具を吹きつけ、布でそれを消し去ること。」と同じだ。

    

 1990年当初から、長谷川等伯(HASEGAWA TOUHAKU)の松林図の持つ存在感や空間表現を自分のものにしたいというおもいとともに、箱状の帆布の生キャンバスを湿らせ、スプレーガンで絵具を吹きつけた。

    

それをコントロールするようにふき取って消し、表現してきた。そうしてできた形のはっきりしないものをPHANTOMと名づけて2009年前半まで制作してきた。しかし、2003年頃からスプレーガンによるドットの表現がパターン化してしまった。新しい表現を求め続ける日々が続いた。

    

 試行錯誤の果てに・・・その変化は2009年5月6日夜、突然やってきた。個展が決まった大阪信濃橋画廊へ行く途中、京都国立博物館に立ち寄った。そこで見た妙心寺展でそれほど興味はないが一度は見てみたかった長谷川等伯の大涅槃図がなかったことを思いだして、その夜コンピュータ上で涅槃という言葉を検索した。
もちろん涅槃の意味は釈迦の入滅の状況であることは知っていた。

    

涅槃は仏教用語サンスクリット語でNirvana。

    

その意味は、なんと「吹き、消す」であった。天啓を感じるとともに、僕の体中に、「吹き、消す」を意味する作品が浮かんだ。僕はそれまで19年間もスプレーガンで絵の具を吹きつけては消す作業の繰り返しで作品を作り続けてきたのだ。おもいの中で些細な変化なのだが、表現として今までのPHANTOMと大いに違う、Nirvana「吹き、消す」が誕生した瞬間であった。

    

 2009年、東京と大阪で開いた個展nirvana「吹き、消す」は、ある人は「風」のようだと言い、ある人は「水の流れ」のようだと言った。
美術作家堀尾貞治さんは「開放感がある、100メートルぐらいのつくらはったら」と言った。
また、先輩の美術作家吉田廣喜さんも消すことの表象に存在感があると言った。
また、故泉茂氏や津高和一氏との関連も語ってくれた。
僕の絵画のルーツは等伯のほかに恩師の泉茂氏であり、津高和一氏であるのだ。
津高さんのアンフォルメルと呼ばれた筆跡や、泉さんの金属的・物質的な表面は僕の作品にも共通するものがあると今はおもう。

    

 2010年、僕は僕にとって未知の感覚や表現によって絵をつくり出すことに費やしてきた。
僕の作品を1980年代から撮り続けていただいた写真家の柏木久育さんは、「壁画にしたらいいよ、横の厚みが隣をほしがってるんだよ」と言った。

    

 詩や音楽で助けてくれた友人の存在や、自らの作品をながめ続ける中で僕はキャンバスに厚みを与えることで、時間をつめこんだタブローにしてきたのだと気がついた。即ちタブローを目指してきたのだが、その落とし所がキャンバスの厚みであったのだ。直感で厚みをつくっていたのだ。

    

 今後厚みのない壁画を描くことは、時間を含んだ4次元表現を目指すのだとおもう。画面が重構造になり、今後の作品の落とし所が厚みではなくなるとおもうのだ。
また、今後僕がタブローを描く時、そこにはしっかりと時間の存在や四次元の存在を含んだ厚みのあるタブローができるとも思うのだ。こうした壁画やタブローを試行していくつもりである。

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